大判例

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東京地方裁判所 昭和30年(ワ)4185号 判決

平和相互銀行

本件建物に原告主張のような根抵当権設定登記及び所有権移転請求権保全の仮登記のあること、原告主張のような公正証書が作成されていることはいずれも当事者間に争がない。

而して証拠を綜合すれば、原告は、昭和二九年二月一八日訴外多田羅務より本件建物を担保にして金九万円を借り受けたが、その際多田羅の求めに応じて建物の権利証と白紙委任状及び印鑑証明書三枚を右訴外人に交付したこと、昭和二九年四月三〇日頃、原告は右貸金の利息を支払うべく右多田羅を訪ねたが、その際印章が要るから一寸貸してくれといわれて印章を渡したところ、数枚の書類に原告の印章を押捺したこと、本件の登記申請書類に添付されている原告の印鑑証明書は前記の印鑑証明書を原告に無断で流用したものであること、本件公正証書作成嘱託の基本となつた委任状中の原告の記名捺印は多田羅務において原告に無断で原告の氏名を記載し、その印章を押捺したものであること、原告は主債務者である訴外大矢富雄とは一面識もなく、同人のために物上保証人となつたり、連帯保証人となるような関係が全くない間柄であること、以上の事実が夫々認められるのである。

右認定事実に、他の証拠を綜合すれば、原告は訴外大矢富雄のために物上保証人になつたり、連帯保証人になつたりしたようなことは全くなく、本件の登記及び公正証書は訴外多田羅務が原告が同人に交付した印鑑証明書等を不正に流用し、又は原告の印章を盗用して偽造した文書を使用して登記を申請し、又は公正証書の作成を嘱託したものであつて、何れも原告の意思に基かないものであると認めるに十分である。被告は被告銀行の行員が本件根抵当権設定の際に原告方を訪れ、その諒承を得たというが、これを認めるに足る証拠はなく、却つてかかる事実のなかつたことが窺えるのである。

右に判断したところから、原告の請求は何れも理由があること明らかであるとして、すべてこれを認容した。

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